ロースターズレポートⅪ_焙煎機R101の加熱データ取得と焙煎プロファイルの最適化の考察 ~Heat Characteristics Measurement of the R101 Roasting Machine and Considerations for Optimizing Roasting Profiles
保有する半熱風焙煎機の加熱特性の測定を行いました。参考にどうぞ。
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概要
富士ローヤル R101(1kg半熱風式)の加熱特性を把握するため、 加熱ガス圧とダンパー開度を変えて温度上昇を測定した。
ガス圧によらずダンパー3が最も効率的に加熱できる条件であることが分かった。得られた結果を基に、焙煎条件を見直し、焙煎前半は排気を絞りRORを最大化し、後半は排気を増やして発熱を適切に逃がす焙煎プロファイルを提案した。
【背景と目的】
富士ローヤル1kg焙煎機(R101)を用いて自家焙煎のコーヒー豆を販売している。焙煎機の外観を図1aに示す。右が焙煎する部分で左下の部分は焙煎した豆を排出して冷却する部分になる。

R101は1kgまでの焙煎が可能である。
半熱風焙煎機と呼ばれる構成で、焙煎機内部の構成の概要を図1bに示す。
鋳鉄製の回転ドラム内に豆が投入され、下からガスで加熱される。ガスによる熱は、強制排気により吸引されるため回転ドラム内に引き込まれ、熱風となって豆にあたる。
ドラムに触れることによる直接的な加熱と引き込まれた熱風による加熱が同時に行われる。この方式はコーヒー豆の個性を引き出しやすいといわれ、広く用いられている方式である。

焙煎のパラメーターとしてガス圧変化による火力調整と強制排気の量を変えるダンパー設定値がある。
前者は熱を与え加熱に作用し、後者は熱を排気するため冷却に作用する。焙煎の前半は熱を加えるだけであるが、焙煎が進むと煙の発生や豆の燃焼に伴う発熱が起こるためダンパーによる適切な排気が必要となる。
安定した焙煎を行うには排気ダンパー設定とガス圧が加熱特性に与える影響を理解する必要がある。
前回のロースターズレポート10では排気特性を評価し、ダンパー設定に対してリニアに排気量の増加が起こることを確認した。今回はダンパー、ガス圧を関連して変化させ温度データを系統的に取得した。
最も基本的なデータとするため、豆を投入しない状態で加熱試験を行い、温度応答(T–t特性)、ROR(Rate of Rise)、排気風量との関係を体系的に測定した。
今後の焙煎条件設定の目安となるデータを取得したので報告する。
【方法】
焙煎機の構成(図)1a,1b)
形式:鉄製ドラム半熱風式
熱源:プロパンガス
排気:強制排気ファン、排気ダンパー(Dump 1〜9)で制御
回転数は固定
温度測定:熱電対(回転中心付近を測定)
条件
測定における条件は以下の通り
・豆の投入なし(ドラム内温度のみを測定)
・ガス圧:0.50〜2.50 kPa(プロパンガス、Max 2.7kPa)
・ダンパー開度(Dumpと記す):Dump 1〜9、9で開度100%、排気量214CMM
・測定方法
余熱を200℃まで与えた後100℃まで冷却し、加熱開始。
140℃から150℃まで上昇する時間もって、RORを算出した。
評価項目
評価における項目は以下の通り
・加熱特性(T–t特性)
・ROR
・ガス圧と ROR の関係
・排気風量と ROR の関係
【測定結果】
1)加熱特性(図2)
ガス圧を固定して、ダンパー設定を変えて温度上昇を測定した。ガス圧は0.5~2.5kPaまで変えた。
ガス圧が高いほど温度上昇が速く、ダンパー開度(Dump) が大きいほど上昇カーブが鈍化する。
Dump 1〜3では応答が鋭く、Dump 5以上で加熱速度が低下する。
特に低いガス圧で加熱する場合にダンパーの影響は顕著になり、ガス圧0.5kPaではダンパー2が最も効率がよい

2)ダンパー開度と ROR(図3)
140℃におけるRORを求めてプロットした図を図3に示す。
Dump が大きくなるほど ROR は低下し、Dump 2〜4付近で最大 ROR を示す。

3) ガス圧と ROR の関係(図4)
図3における各ガス圧の最大ROR(Dumpの値2~4)とガス圧をプロットしたものを図4に示す。ガス圧とRORは単純に相関する。
基本はガス圧を上げるとRORが上がるが、Dumpを5以上にするとRORは低下し始める。冷えた外気が混入するので内部の温度上昇が抑えられると考えられる。
低いガス圧ではDumpの影響がより顕著になる。

以上、今回のガス圧範囲ですべてにおいてDump4以下が効率よく加熱できる条件であることが分かった。
マージンを考えるとすべての条件でDump3がよい。この条件でガス圧を変えるとRORを直線的に変えることができる。
【考察】
今回のDumpとRORとの関係、および今後の焙煎条件決定への指針について考察する。
1)DumpとROR の関係(図5)
図3のRORは各ガス圧のプロットであり、当然ガス圧が高いと大きくなる。
各ガス圧のRORをその最大値で規格化しDump依存をプロットしたものを図5に示す。
同時に過去に測定した排気風量を右軸に示す。排気風量はDump9で最大値214CMMであり、この値で規格化してある。

どのガス圧でもDumpを大きくするとRORは低下するが、高いガス圧ほど低下しにくくグラフは右にシフトすることが見て取れる。これは、Dumpを大きくするとドラム内の排気量が増えるため、火力を大きくすることで燃焼カロリーが大きくなり、外気の混入による温度低下が起きにくくなるためと考えられる。
実際に、Dump8➡9においては排気風量の変化が小さくRORの変化も小さい。
一方、排気を小さくする場合はRORの上昇は限定的である。
Dump1と4を比べると排気は2倍近く変化しているのに、RORはほぼ同じである。これは以下の理由と考えられる。
外気がドラム内部に入り温められるまでは有限の時間がかかる。排気風量が大きいと外気の滞在時間が短くなり外気増大は内部の冷却増大つにながりRORの低下につながる。
逆に、排気量が少ないとドラム内での外気の滞在時間は増えるため外気が温まる時間が十分にある。この場合排気量が多少増えても外気はすぐに温まるため、RORの低下は起こりにくい。したがって、Dump3以下では排気を絞ってもRORは増加しないものと考えられる。
このように半熱風式焙煎機で効率よく加熱するには、Dumpを使って排気量をある値以下に絞る必要がある。ただし、その値以下に絞ってもRORアップにはつながらない。下限がある。
2) 今後の焙煎条件決定への指針
以上のデータをもとに、ガス圧、ダンパーなど理想的な焙煎プロファイルを考える。
焙煎のコンセプトは以下の通り。
①焙煎機に豆を投入後、茶色くなり始める温度(カラーチェンジ温度)まではRORを可能な限り高くする。
ただし、豆が焦げ欠陥を作らないことに注意する。焦げ欠陥は舌にざらつきのあるコーヒーになる。
②1ハゼが始まるときは、ROR は10℃/min前後、浅煎りの場合は8℃/min前後までに低下させてあり、所望の温度・所望のデベロップ時間(60秒以上)で再現よく取り出し可能なこと。
上記①を達成するためには、火力を上げてやればよい。しかし、半熱風式の場合ドラムを外部からむやみに強火で加熱するとドラムが高温になり豆が触れて焦げのリスクが高くなる。
したがって、外部火力はできるだけ弱くしてRORを上げる必要がある。
今回の結果を利用すると、ガス圧は上げずにダンパーを絞ることでRORを上げることができる。
①ではダンパー設定は火力によらず基本3(2~4)、火力は投入豆量に応じて設定する。豆の大きさに合わせた微調整も行う。
投入後焙煎が進行すると、豆は薄く着色しはじめメイラード反応に入る。酸化燃焼プロセスなので発熱反応が始まる。発熱が始まると排気を適切に行わなければ、RORは急上昇し制御できなくなる。したがって、着色が始まるカラーチェンジポイント前後からは投入豆量に応じたダンパー設定にして十分な排気を行うことが重要である。
豆自身の発熱によるため投入量が多いときは排気量を増やし、少ないときは抑える。
カラーチェンジで排気を調整したら、1ハゼ時に狙いのRORに収束させるようにガス圧を調整すればよい。
発熱前のROR最大化と、発熱後の排気適正化を分けて考えるのがポイントとなる。
ダンパーの設定は、①で3(閉じ気味2-4)、②で5~9(投入量による) と変化させる必要がある。
3) テスト焙煎
これまでの考察を確かめるため実際にプロセスを行った。ダンパー設定変更なしと、豆の着色(カラーチェンジ)付近でダンパー設定変更を行った場合の記録を図6に示す。
ダンパー以外のガス圧などすべて同じ設定である。投入した豆は500gでタイのウォッシュド豆を用いた。狙い通り前半のみ立ち上がりが良くなり、カラーチェンジ付近の140℃でのRORの増大の効果がみられた。焙煎後の重量変化含めプロセス上特に不具合はなかった。

【まとめ】
富士ローヤル R101 焙煎機の温度上昇特性を評価した。ガス圧・ダンパー開度(Dump)・温度応答・ROR の関係を体系的に評価した。
ガス圧を上げると温度上昇が速くなり、ROR は線形に増加する。
Dump を開けるほどRORは低下し、すべてのガス圧でDump3前後 が最も効率的に加熱できる条件であることが分かった。
そしてDumpをさらに絞ってもRORの増加は見られなかった。
理想的な焙煎プロファイルを考案した。
カラーチェンジ前は投入量によらずダンパーを3前後にして最大効率で加熱し、カラーチェンジ後は投入量に応じたダンパー設定にして発熱反応に伴う熱排気の適正化を行う。
プロセス途中でダンパー設定を変えることで、焦げのリスクを減らしながら、焙煎時間を短くし風味豊かなコーヒーの焙煎が可能になると考えられる。
【お礼】
素人の長い報告をここまで読んでくださりありがとうございました。
本研究に興味がある方がいらっしゃればご連絡いただけるとありがたいです。
【参考文献】
END

