ロースターズレポーⅫ_焙煎機R101の蓄熱特性に関する考察~TPと平衡温度による余熱の評価~A Study of the Heat Storage Characteristics of the Fuji Royal R101 Roaster – Evaluation of Residual Heat Based on Turning Point and Equilibrium Temperature –
保有する半熱風焙煎機の加熱特性の測定を行いました。参考にどうぞ。
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概要
焙煎機の余熱や蓄熱性は投入温度やTP温度によって語られることが多い。
富士ローヤルR101を用いた投入実験により、TP温度は投入直後の熱的つり合いを表すが、焙煎機全体の蓄熱状態を反映してはいないことが分かった。TP到達後も焙煎機から豆への熱供給が継続することが確認され、余熱を利用した焙煎を行う際には、投入温度やTP温度だけでなく、平衡温度まで含めて考慮する必要がある。
【背景と目的】
焙煎機の特徴として、「蓄熱性が高い」「蓄熱性が低い」という表現がしばしば用いられる。しかし、その蓄熱性が何を意味するのかについては明確ではない。
焙煎では、生豆投入後に豆温度が低下し、TP(Turning Point)を経て再び上昇する。この過程では、投入前に焙煎機内部に蓄えられた熱が豆へ移動している。
本実験では、加熱を停止した状態で生豆を投入し、投入後の豆温度変化を測定した。投入温度および投入量がTP温度と平衡温度に与える影響を調査し、焙煎機の蓄熱特性について検討したので報告する。
【方法】
測定に用いた富士ローヤル焙煎機R101の構成を(図)1a,1b)に示す。
R101を200℃まで加熱したのちガスを止めてダンパー9にて自然に降温し90℃になってからダンパーを1にして、生豆を投入した。
投入温度は90℃以外に,110,140,170℃と4水準、投入量は150,250,500,1000gと4水準で測定した。
投入後の豆温度変化を記録し、投入後に観測された豆温度の極小値をTP温度とした。
また、RoR(Rate of Rise)が0となった時点の温度を平衡温度と定義した。 さらに、投入直後の温度挙動を考察するため、ドラムと生豆のみからなる単純熱平衡モデルを計算し、実測値との比較を行った。


【測定結果】
図2に温度変化のグラフを示す。
生豆投入後、すべての条件で豆温度はいったん低下した後にTPへ到達し、その後再び上昇した。温度上昇速度は徐々に低下し、3分以上かけて平衡温度へ収束した。

表1および図3にTPおよび平衡温度の変化を示す。


TP温度は投入温度が高いほど上昇し、投入量が大きいほど低下した。同様の傾向は平衡温度についても認められた。
投入温度170℃の場合、TP温度は250g投入時の128℃から1000g投入時の97℃まで低下した。一方、平衡温度は142℃から112℃まで低下した。
TP温度と平衡温度との差は投入温度が高い条件ほど大きくなる傾向を示した。90℃予熱条件では1~2℃程度であったが、170℃予熱条件では14~21℃となった。 投入温度とTP温度、ならびに平衡温度との関係は、いずれも概ね単純増加を示した。
【考察】
投入後の温度変化を理解するため、ドラムと生豆のみからなる単純熱平衡モデルを作成した。(図4)

モデルでは、投入前にドラム全体が一様温度T1に加熱され、生豆は室温Tbで均一温度を持つと仮定した。また、投入後にドラムと生豆が熱交換し、熱平衡に達すると仮定した。
このときの温度T2は、
T2=(Cd・T1+Cb・M・Tb)/(Cd+Cb・M)
で表される。
ここでCdはドラムの有効熱容量、Cbは生豆の比熱容量、Mは投入量である。
Cdをフィッティングパラメーターとして実験値(TP温度、平衡温度)と比較した結果を図5に示す。

モデル計算と実測値を比較した結果、TP温度は150~500g条件で概ね良好な一致を示す。この結果から、TP温度は主としてドラムと生豆との熱交換によって決まることが分かる
一方、1000g投入条件では実測値がモデル計算値から乖離した。
図6に有効熱容量を変更して計算した結果を示す。約1.5倍として一致が改善された。このことは、大量投入時には単純なドラム-生豆系では説明できない熱供給が存在することを示唆している。要因としてドラム以外の蓄熱部材が寄与した可能性があるが、その詳細は今後の検討課題である。

平衡温度については、単純熱平衡モデルとの大きな乖離が認められた。モデルではT2が到達温度となるが、実験ではTP到達後も温度上昇が継続し、より高い温度で平衡状態となった。
この結果は、投入後にドラム以外の部材に蓄えられていた熱がドラムへ伝達され、さらに豆へ供給され続けていることを示唆している。
TPは投入後に観測される豆温度の極小値であり、ドラムと生豆との間で成立する短時間の熱的つり合いを反映している。
一方、平衡温度はTP到達後も継続する熱移動の結果として到達する最終温度であり、焙煎機全体の蓄熱状態を反映している。
余熱について
余熱は投入温度やTP温度によって語られることが多い。しかし本実験では、TP到達後も温度上昇が継続し、より高い平衡温度に到達することが確認された。
このことから、余熱を利用して焙煎を行う場合にはTP温度だけでなく、平衡温度まで含めて考える必要がある。
以上のように、TP温度は投入直後の熱的つり合いを表し、平衡温度は焙煎機全体の蓄熱状態を反映していることが分かった。
余熱を利用した焙煎をする際にはTP温度だけでなく平衡温度まで含めて考える必要があり、両者の差は焙煎機の蓄熱特性を表す指標となる可能性が示された。
【まとめ】
R101を用いて加熱停止状態での投入実験を行い、投入後の豆温度変化を調査した。
TP温度は単純な熱平衡モデルによって概ね説明できたことから、投入直後の温度挙動は主としてドラムと生豆との熱交換によって決定されることが示された。
一方、平衡温度はモデル予測値より高くなり、ドラム以外に蓄積された熱が投入後も豆へ供給されていることが示唆された。
TPはドラムと生豆との短時間の熱的つり合いを表し、平衡温度は焙煎機全体の蓄熱が反映された最終的な熱的つり合いを表している。
TP温度と平衡温度との差は焙煎機の蓄熱特性を表す指標となる可能性があり、蓄熱性を評価するための一つの考え方を提示した。
【お礼】
素人の長い報告をここまで読んでくださりありがとうございました。
本研究に興味がある方がいらっしゃればご連絡いただけるとありがたいです。
【参考文献】
1)ロースターズレポートⅢ_焙煎はどのように進むのか?,重量変化による定量評価 Observing the progress of roasting using a semi-hot air roaster
2)ロースターズレポートⅩ_富士ローヤル1kg焙煎機 R101の排気特性の測定 Roaster’s Report X_ Exhaust Characteristics of the Fuji Royal R101 (1kg)
END

